バキは何処へゆくのだろう。
独歩ちゃんがアライJr.にリベンジしたのは、まあ、わかるんだ。
キャバレーで羽目を外していた状態で後ろから勇次郎に襲いかかれ敗北したあの時、独歩ちゃんはさぞかし自分がいかに未熟であったか思い知ったのだろう。酒気を帯びており、戦闘の心構えが出来ていない相手を後ろから襲ったのにも関わらず、独歩は『負けた』と判断し、勇次郎は『勝った』と判断した。
つまり独歩とか勇次郎くらいになれば、あれくらいは当たり前なんだろうと思うんだ。戦えないときを狙う、準備が出来てないときを狙う、油断してるときを狙う。そんなことは当たり前だ。拳が駄目なら蹴りで、蹴りが駄目なら他の何かを使って戦うのが常識である。が、ゆえに。拳での闘争しか想定しちゃいねえクセに『指が折れているからベストではない』なんて抜かすのは独歩的に意味不明であって、ボクシングだけで戦うっていうのはつまりそういうことなんだ。かつやりたくなかったら帰ればいいんだし、Jr.にはその選択肢が確かにあったはずなんだ。
独歩がやりたいというのは自由だし、Jr.が『気が向かない』って帰るのも自由。それに後ろから襲い掛かるのも独歩の自由だし、カウンターを決めるのもJr.の自由。挑発に乗ってヨーイドンで戦い始めたJr.が若いってことなんだろうな、っていう。こと独歩に関してはそう思える。ドリアンの時に自分の甘さの所為で爆弾喰らって敗北したし、そのあとならば尚のことだろうと。そう思える。実際、バキは梢江を連れてシコちゃんと柳の前から逃げたことだってあったわけだしなー。
で、じゃあアライ父になればどうかといわれると、もう完全にわけがわからんのだよなー。
まず、アライ父は手段は問わずJr.に勝つことが目的である。あの歪んだ笑顔とその後の演技を見るにそれは間違いないんだ。であるならば、それは何故か。この時点で既に親父さんはJr.など既に眼中になく、とりあえずJr.をぶちのめして(これは親父さんの中で簡単に出来て然るべきことであり、それくらい鍛えてきた自負があるがゆえに)、その後に繋がる戦いをするために、良くも悪くも普通に倒せそうな傷だらけのJr.をボコろうという思慮の元動いてる…というくらいにしか考え付かないのだけど、どうだろう。
アライ父は『かつての自分をKOした息子』にリベンジしに来たんじゃないのか。独歩みたいに『いつものスタンス』で戦いに挑むんならいざ知らず、アライ父はJr.の全力と戦って勝たねえと意味ねえんじゃねーのかなぁ。そもそもこのチキンがっていう侮蔑は論理のすり替え以外のなんでもねえな。