少女義経伝雑感。
今回は長々と否定的なこと書いてるので注意してください。
そも、この作品のシナリオライターさんが、このゲームにおいてやりたかったこととはなんだろう。源九郎判官義経那須与一宗隆をあえて女性視して描く必要のあったこの作品において、やれること、やりたいことは星の数ほどあったと思うのだけど、終始同じノリの、平たくいえばギャルゲーのノリを貫いたことになんらかの意味を見出すことは僕には無理だった。
テーマっていうのはゲームであろうが小説であろうが大事なものであって、例えばとらハなんかはテーマとそれを一貫するという点において非常に高い評価を得ているわけだけども、この作品においてのテーマとはなんだろう。
コンセプトと言い換えてもいい。ツヨキスとかキミキスとか、やや古いところではシスタープリンセスとか、正直どうかと思わないでもないようなコンセプトを持った作品が多々あって、しかしそれが商業として普通に成り立っているのはそのコンセプトを一貫しているからであろうと思う。多様なヒロイン像を用意し、しかし一貫したテーマの下で描くことによって、そのテーマを嗜好する人たちのみならず「そうでない人たち」を引きずり込むことにも目を向けておくというか。結果的にそうなってる例も多々あるだろうけども。
で、少女義経伝だけど、アイデアのレベルで満足しきってる感が否めない。
小説賞とかで「アイデアはいいがもう少し捻りが欲しかった」などと書かれて賞を逃す作品は星の数ほどあるけれども、まさにそれ。こちらはあと4捻りくらい欲しかった。基礎的なアイデアと画力に頼って中身がない典型とでもいおうか。これでゲームシステムが独創的だったりとかシステム的にやりたいことがあったのなら話は別なのだけど、物珍しいだけで特に面白くはないシステムだったし。

  • 現代の男の子が中世にタイムスリップしました。
  • 源九郎判官義経は実は女の子でした。
  • 一緒に平家討伐します。

以上。…いやちょっとまて。そんだけか。
三行で全てあらわせる作品ってそうないぞ。最近読んだ中ではとある魔術の禁書目録くらいか。…というと、僕の中で禁書目録がどんな位置付けかわかるな。
「なんでタイムスリップしたの?」「三種の神機の不思議パワーで」
…そんなことでいいのか。もっとこう、なんかあるじゃん。なにも語らないにせよ「神器とはなんなのか。誰が作りいままでに使用された例はないのか」とかそういったことをキャラクターに言わせつつ「しかし何も記録にはない。わかっているのは…」とかそういう会話をさせるだけでも最低限の(これは続編を作る作品にほぼ限定された本当に最低限の誤魔化し方だけども)体裁は整うというのに、それもない。
未来人でなくては使えない武器が存在するということは過去世界においてはゴミ同然であるというのに、ソレの威力についての知識を持つ人間が存在するということはつまり「かつて扱えた人物が過去世界にいて神機を持っていた」ってことに他ならず、それは「はるか過去に神機をもたらした未来人が存在した」とかそういったことを内包することになるのだけど、まさかスルーされるとは思わなかったぜ。あるいは主人公が完全に傍観者ならなー。半端にストーリーに絡めようとするからこうなるんであって。
これで「主人公は○○の血を引いていて…」とか「主人公には不思議な力があって…」とか「予言によると主人公が触れる他に手段がなくて…」そんな誤魔化し方をするのは三流ライトノベルだけど、それをしかねないパワーがこの作品にはあり、それはなんというか、その、駄目なのではないかと思う。
2はどうだ。2はどうなんだ。ああああああー、もやもやする。