新装版 義経 (上) (文春文庫)

新装版 義経 (上) (文春文庫)

まだ一巻目なのだけども、燃えよ剣ほどは面白いと感じなかった。
何故かと問われると理由はいくつか出てくる。
源義朝が敗れた直後くらいから義経が自刃するまでの話をやるというのだから仕方のないこととはいえ「義経」の表題を背負っている割に上巻後半での義経の出番が驚くほど少ない。頼朝との価値観の違いや義仲勢力の盛衰について描かないと話が進まないのはわかるのだが、しかしなんとも。
義経が政治的痴呆であると繰り返し描かれることもそうだろうか。それ自体はまさに義経といった感があるけれども、あまりに愚かで純朴過ぎてどうも感情移入がし辛く、かといって土方歳三義豊のように英雄的かと言われるとそうでもない。義経が合戦に参加する様子も上巻ではほとんどないのでそういった方面で英傑であるという認識もし辛い。一度言い出したらたった一人ででもやる男であるとされているのに源頼朝の意見に対しては簡単に引き下がるあたりもどうもキャラクターの描写に一貫性を持たせられていない気もする。
序盤は流石司馬遼太郎だと思うくらいに面白いんだよな。那須与一宗隆との出会い、奥州は藤原秀衡との接触。弁慶との無数の偶然の果てでの奇縁。このあたりまでは面白く読んだ。
…のだけど。むう。どうもな。傑作たる燃えよ剣を読んだあとならばこそアレと比較してしまう。
いや続き物の上巻を読んだだけで評価を与えるのは間違いであるというのはまったく正論なので荷解きが終わって下巻が見つかれば即座に読むことにしよう。
しかし。しかしなお残念だ。
ライターに無駄に有り余る技量と無闇矢鱈なチャレンジ精神があれば、きっと少女義経伝は優秀な架空戦記としてよくわからん層に大人気を博したろうに。具体的には俺とか。俺以外に好きな人が見当たらんけど。
いや少女義経伝をやりはじめたあたりからずっと義経ものを追っているあたり、僕は既にドハマリしてるのかもしれんがな!