はてな年間100冊読書クラブ:095

全一冊 小説 立花宗茂 (集英社文庫)

何が書きたかったのかというのはよく伝わるが、それ以上のものは伝わってこない。義に生きたとか誠に生きたとかそういうのは別に構わないが、宗茂が実際になにをどうしたというシーンがほぼ皆無なので必ずしも要るとはいえないシーンが長く続いてそのまま終わった、という印象を受けた。
由布雪下あたりかもうちょい下の人間か或いはさらにもうちょい下の人間をでっち上げて、そいつの視点から書くとかってしたほうが立花主従の結束の頑迷ともいえる異常さが伝わったと思うのだが、どうも全編通して仲違いもなく、平たく言えば波に欠けるというか、関ヶ原も大阪の陣も島原の乱でさえも数ページで流されて、転封先の山が故郷の立花山に似ておるわというだけのことのほうにはるかにページを割いているというのも、なんかこう、もうちょっと、いや、戦が書きたかったわけではないっていうのは大いに理解するところではあるが、しかしそれでももうちょっと書き方はあったのではないか。改易と大名復帰のそれぞれ原因となる事件だというのにサラッと流されたしさー。
作者は直江兼継メインの話も書いてるらしいので読もうかとも思ったが、やめておこう。俺の趣味にはあわないらしい。