はてな年間100冊読書クラブ:023
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/05/24
- メディア: 文庫
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「親の離婚話」からスタートした小学生の大冒険が、ドラゴンvs魔族による世界最後の日まで発展するとはついぞ思わなんだぜ。宮部みゆきを甘く見ていた。
数十万人も住んでいた筈の北のアンカ族が半日にして数十名にまで激減する悪夢の時。十数名の悪党どもを苦もなく薙ぎ倒すはずのハイランダーたちが、愚にもつかぬアンデッドの群れに為す術なく殺されていく。この圧倒的物量による絶望感はたまらんものがあるな。
複線の張り方とか、話の展開とか結末とかに不満がないわけではない。
結局のところワタルはたかが離婚問題なのでミツルのいた境地には辿り着けなかったんだなと思う。目に入れても痛くなかったであろう妹が血塗れになって事切れている姿を見れば、ミツルの行動のほうがむしろ人間として自然だと思うのだがどうだろう。ミツルはワタルが語る正論なんかすべて承知の上で、それでもなお、一刻も早く妹を生き返らせたいと思っていたんじゃないのかな。正直ワタルは「どうにでもなる」不幸なんだよな。……などと、ちょうどワタルくらいのときに両親が離婚一歩手前まで言った家庭の人間は語る。
例えば龍騎では、真司は蓮とか北岡の覚悟を知ってもなお「わかってるよ! わかってるけど、だからって殺し合いを止めないわけにいくかよ!」という境地に到達したわけだが、それはつまり蓮や北岡の思考は理解できるが、それはそれ、これはこれだ! といった考え方に近いと思うんだな。
ワタルはなんのかんの言ってミツルの行動を普通に否定してた気がする。ミツルは自分の行動が間違ってることなんかわかってたはずだ。ただ、それはそれ、であっただけで。
その辺に関する言及がないのは少し不満だったかもしれない。
あと人柱の件に関して、結局のところ女神にはなにも聞かないのか。あれだけ引っ張っておいて。