はてな年間100冊読書クラブ:063

戦塵外史四 豪兵伝 戦塵外史 (GA文庫 は 2-4)

戦塵外史四 豪兵伝 戦塵外史 (GA文庫 は 2-4)

いかにも、といった感じの構成だったので思わず手にとって購入してしまったのだが、実際思ったとおりに歴史小説仕立ての短編集であったですよ。
短編集なら大丈夫だよな、うん。とか思ってたけれども、4冊目であるこれだけ読んでも特に用語的に問題があったりするわけでもなく。例によって大軍を率いての大激突といった風情ではなく、軍vs軍のときでも、その中にいる一兵卒にまつわるエピソードであったりなどが徹底されており、つまり、この人はそういうのが書きたいわけではないのだろうな、といった感覚であるのが少し残念だ。
僕は剣豪小説などは藤沢周平の一部しか読んでいないので偉そうに語る立場にはないが、ああいうのもあったし、治世に尽くした領主の話とか、鍛冶屋の話とか、随分といろいろやってんな、といった感じだった。焦点とか自分が書きたい話などがボヤケてるんじゃないかとすら思った。
気になる点としては、どれもこれも、安易に走った手法で描かれてるってところだろうか。「筆者が思うに」とか「後世における○○のようなもので、」「驚くなかれ、これは――」などという語り口は歴史小説的だといわれれば確かにそうかもしれないが、前後の繋がりが意味不明なところなども多く、「こういう言葉が使いたい」といった意識が先行していたのではなかろうか。
あとはもっと単純に、僕と価値観が違いすぎるようにも思える。「貧乏くじを引く覚悟のない奴は、」のくだりとかは正直意味不明だと思ったし、「斬りたいときにだけ斬れる剣」はあまりに漫画的過ぎて、ファンタジー歴史小説的な切り口で料理するには作者の筆力はあまりにも未熟だ。傭兵が、殺した相手を「今のは同業者だったな」などと考えるのは、少なくとも冷静さの演出としては大失敗している。
歴史小説的な切り口はなるほど、確かにライトノベルでは他にあまり見ないものではあるが、この筆者は基本的にそれだけの人なので、歴史小説を読みなれている人であればあるほど痛い目を見るのではないか、と思う。目新しさや構成力なども特筆すべきほどではなく、「歴史小説的なだけで珍しい」ということでそれに満足してしまっているのか、さしたる捻りを加えようとしているようには思えず、最終的には「あー。面白くないとは言わないけれども、うーん…」といった程度の評価に落ち着いている。俺的に。
つうか、歴史小説を読み慣れている人が読むラノベではなく、そういうのを読んだことはないが好きになる素養を持っている人のための入門書みたいな感じだろうか。当たり前といえば当たり前だが。
どうしよっかなー。古本屋で安く見つかれば他のも買う、くらいにしとくか。