はてな年間100冊読書クラブ:086

島津奔る〈上〉 (新潮文庫)

島津奔る〈上〉 (新潮文庫)

む、む、む。思っていた面白さの4割くらいであろうか。なにはなくとも龍伯公が老いて愚鈍と化しつつあるというのが納得がいかない。片方を貶めて片方を持ち上げるというのはこの手の創作ではよくあるが、文章力が追いついていないで、俺キャラつえー的な匂いを感じる。維新入道義弘がなにひとつミスなく生きてきたっていうあたりにリアリティがないのかなー。実際の薩摩は野蛮人の最たるものであったようだが、そういったあたりにも触れない。うーん。
つうか、朝鮮からの撤退戦の殿ってのはいいとしても、20万vs6000というのはいくらなんでもねえよ、と思った。もちっとノッソリ書くべきではなかったか。プロローグのように積み重ねのない段階でこんな話を書かれてもリアリティにかけるというか、せめて沖田畷の合戦とか耳川の合戦を最初に持ってくるとかだけでも随分違うはずなんだが、そういうのもないし、俺みたいな人間が「勝てるわけねえじゃん」的な認識でいるというのに他の人間であれば尚更あるであろう。納得しがたいものを感じる。これがたとえば消耗を強いつつ撤退して頃合を見て釣り野伏せの要領で長く伸びた敵を分断して撃破しつつ、再び消耗を強いつつ撤退して兵糧切れを見計らって追い討ちをかけ混乱させ、とかであればまだいくらか納得も出来たと思うのだが。史実と違うわけだし、うーん。なんかなぁ。半分の十万くらいなら、まだリアリティが……いや、ないか。Wikiをどこまで信じていいかわからないが、実際10万程度の敵ではあったようだが、しかしどうかなー。うーんうーん。
いや、面白くなかった最大の原因はそこじゃない。前述したが「義弘だけはすべてを見通しだったけど他が愚者過ぎたのでどうにもできませんでした」みたいな書き方をここまで徹底するともはや「気持ち悪い」といったレベルですらある。そこが一番酷い。