とはいえど、島津と
関ヶ原の役を愛してやまない俺として、この下巻の内容が面白くないわけがない。義久がほとんど出てこないので上巻のような切ない思いもせずにすんだし、「悪びれぬのは流石というか」というような出だし付近数ページ
からして既に掴まれた感がある。「上方へ罷り通る」、「敵陣突破」、「捨てがまり」のすべてのシーンが血が沸いて死ぬところだった。そういった異常に熱いシーンを過ぎたあとであっては、20騎で3000兵の突撃を押し返した、とかいう描写もさもあろうと思えるあたりが小説的説得力って奴だな。上巻最初の
泗川の戦いにもこういう積み重ねがあったあとならなァ、と思うには思うが、まあ、下巻は面白かったのでよし。
最後の「さても
関ヶ原合戦というものは…」といったくだりはマジ泣ける。いや、不満もあったが、絶版のこの本を労せず手に入れた俺は幸運であったのだろうな。